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おんじが選ぶ「2015年の映画トップ3」

もう今年も終わりに近づいてきました。

さて、今年も私ごとながら、劇場公開作品の個人的なTOP3を選んでみたいと思います。

今年、私が映画館で観た映画はぜんぶで88本(旧作4本含む/リストは最後に掲載)、相変わらず偏っているかもしれません。あれだけ評判の良かった「マッド・マックス」も見逃したし、「スター・ウォーズ」もまだ観に行けてませんし。そんな中でも、3本に絞るのは容易なことではありませんでしたが、決めました!

バフマン・コバディ監督「サイの季節」

2012年制作のイランとトルコの合作映画です。

クルド系イラン人の詩人サデッグ・キャマンガールの実体験を基に、イランから亡命を続けているゴバディ監督が母国を離れ、異国の地トルコで撮った作品だそうです。

一言でいえば、30年にわたる愛の悲劇を詩的に描いた切ない映像叙事詩。その内容は重く衝撃的ですが、それ以上に私の気に入ったのは、息を呑むような美しい映像表現です。まずは、高コントラスト・低彩度で品のいいルックが私の好みにずっぽし。素晴らしいロケーションのなかで、幻想的なショットを中心に紡がれていきますが、その空間的時間的な設計が素晴らしい。引き絵が多い印象が残りますが、意外とアップも多用され、その編集のリズムもまたいいんです。役者の表情や目がさまざまな想いをセリフなしでも雄弁に伝えてくれます。

語り方は時間軸をばらして再構成するかたちをとっています。個人的にはパズルを弄ぶような叙述法は嫌いなのですが、この作品は嫌味がありません。20年前だろうが、30年前だろうが、その痛みがいま切実に痛み出したら、過去が無秩序に現在に嵌入してくるのは、しごく自然なことだと思えるからでしょう。

アレクサンドル・コット監督「草原の実験」

2014年制作のロシア映画。

中央アジアを思わせる、四方に地平線が見渡せるような広大な平原、そこにぽつんと建つ一軒のあばら屋に暮らす父と娘(と思われる中年男と少女)を中心とした無言劇。文字通り一切台詞がないのですが、自然に見えます。キム・ギドクの「メビウス」も無言劇でした。あの作品は前半さすがに不自然で無理があるなあと感じたのですが、この作品における無言という演出は、新藤兼人の「裸の島」並みに必然的に思えました。

といって、リアリティに溢れる「裸の島」とはむしろ対極にあって、おとぎ話のような設定の寓話です。おそらく世評では、この寓意に満ちた世界のなかで起こる、最後の結末の衝撃が話題になっていたのでしょうが、私はもうそこへ至るまでの部分で十分に感嘆していました。とにかく圧倒的な自然などの映像の美しさ、単純ながら面白い撮影トリックを使った遊びの演出、ときおり挿入されるプリミティブな音楽。純粋に映像的な驚きに満ちていて、わくわくしながら観てました。

橋口亮輔監督「恋人たち」

2015年制作の日本映画。

橋口監督の前作「ぐるりのこと」も傑作でしたが、この新作も前作に勝るとも劣らない傑作です。3つの物語が交錯するオムニバス型の映画で、3つとも心に刺さるような痛みを伴いますが、観終わった後、ふしぎな爽やかさが残ります。主人公はみな監督が講師を務めたワークショップに参加していたという有名でない役者さんが演じていますが、光石研や安藤玉恵、リリー・フランキーといったすでに名のある手練れと共演してもまったく引けをとらない見事な演技を見せてくれます。

映像的には先に挙げた両作のような、はっとするような魅力は乏しく、むしろ「それはないやろ」という感じの撮影や編集もあります。ですが、そんなことは些細な瑕疵でしかないと思わせるような芝居です。

友人のインディーズ映画監督・西田啓太の言葉を借りるなら「リアルっていうと手持ちカメラで揺らしておけばいい、ってもんじゃないことを教えてくれる」映画。そんな物語と演出・演技の強度を持った作品です。

最後に、今年私が映画館で観た作品のリストを掲げておきます。

作品タイトル(制作年/制作国/監督名)

は私のおすすめ

(私は、簡単な鑑賞メモを手帳につけていて、その際、個人的な好みを5点満点で採点してます。は5点を付けた作品です)

は大阪芸大出身の監督、は美専出身の監督です。

紙の月(2014/日本/吉田大八)

バンクーバーの朝日(2014/日本/石井裕也

マップ・トゥ・ザ・スターズ(2014/カナダ+アメリカ+ドイツ+フランス/デヴィッド・クローネンバーグ)

サンバ(2014/フランス/エリック・トレダノ+オリヴィエ・ナカシュ)

百円の恋(2014/日本/武正晴)

寄生獣(2014/日本/山崎貴)

馬々と人間たち(2013/アイスランド/ベネディクト・エルリングソン)

薄氷の殺人(2014/中国+香港/ディアオ・イーナン)

ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して(2013/フランス/アルノー・デプレシャン)

滝を見にいく(2014/日本/沖田修一)

イロイロ ぬくもりの記憶(2013/シンガポール/アンソニー・チェン)

さよなら歌舞伎町(2014/日本/廣木隆一)

さらば、愛の言葉よ(2014/フランス/ジャン・リュック・ゴダール)

おみおくりの作法(2012/イギリス+イタリア/ウベルト・パゾリーニ)

御園ユニバース(2014/日本/山下敦弘

フォックス・キャッチャー(2014/アメリカ/ベネット・ミラー)

イーダ(2013/ポーランド+デンマーク/パヴェウ・パヴリコフスキ)

二重生活(2012/中国+フランス/ロウ・イエ)

アメリカン・スナイパー(2014/アメリカ/クリント・イーストウッド)

ビッグ・アイズ(2014/アメリカ/ティム・バートン)

パリよ、永遠に(2014/フランス+ドイツ/フォルカー・シュレンドルフ)

イミテーションゲーム(2014/アメリカ/モルテン・ティルドム)

女神は二度微笑む(2012/インド/スジョイ・ゴーシュ)

間奏曲はパリで(2014/フランス/マルク・フィトゥシ)

ギリシャに消えた嘘(2014/イギリス+フランス+アメリカ/ホセイン・アミ二)

カフェ・ド・フロール(2011/フランス+カナダ/ジャン・マレク・ヴァレ)

マミー(2014/カナダ/グザヴィエ・ドラン)

ザ・トライブ(2014/ウクライナ/ミロスラブ・スラボシュビッキー)

あの日の声を探して(2014/フランス+ジョージア/ミシェル・アザナヴィシウス)

バードマン(2014/アメリカ/アレハンドロ・イニャリトゥ)

パレードへようこそ(2014/イギリス/マシュー・ウォーチャス)

インヒアレント・ヴァイス(2014/アメリカ/ポール・トーマス・アンダーソン)

サンドラの週末(2014/ベルギー+フランス+イタリア/ダルエンヌ兄弟)

ゼロの未来(2013/イギリス+ルーマニア+フランス/テリー・ギリアム)

私の少女(2014/韓国/チョン・ジュリ)

やさしい女(1969/フランス/ロベール・ブレッソン)

追憶と踊りながら(2014/イギリス/ホン・カウ)

チャッピー(2015/アメリカ/ニール・ブロムカンプ)

セッション(2013/アメリカ/ディミアン・チャゼル)

海街diary(2015/日本/是枝裕和)

涙するまで、生きる(2014/フランス/ダヴィド・オールホッフェン)

エレファント・ソング(2014/カナダ/シャルル・ビメナ)

あん(2015/日本+フランス+ドイツ/河瀬直美)

ルック・オブ・サイレンス(2014/インドネシア+デンマーク+フィンランド+ノルウェー+イギリス/ジョシュア・オッペンハイマー)

コングレス未来学会議(2013/イスラエル+ドイツ+ポーランド+ルクセンブルグ+フランス+ベルギー/アリ・フォルマン)

雪の轍(2014/トルコ+フランス+ドイツ/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)

きみはいい子(2015/日本/呉美保

ハッピーエンドが書けるまで(2012/アメリカ/ジョシュ・ブーン)

フレンチアルプスで起きたこと(2014/スウェーデン+デンマーク+フランス+ノルウェー/リューベン・オストルンド)

野火(2014/日本/塚本晋也)

共犯(2014/台湾/チャン・ロンジー)

サイの季節(2012/イラン+トルコ/バフマン・コバディ)

チャップリンからの贈りもの(2014/フランス/グザヴィエ・ホーヴォワ)

この国の空(2015/日本/荒井晴彦)

ジュラシック・ワールド(2015/アメリカ/コリン・トレボロウ)

ふたつの名前を持つ少年(2013/ドイツ+フランス/ペペ・ダンカート)

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター(2014/フランス+ブラジル+イタリア/ヴィム・ヴェンダース+ジュリアーノ・リベイロ・サルガド)

さよなら、人類(2014/スウェーデン+ノルウェー+フランス+ドイツ/ロイ・アンダーソン)

悪名(1961/日本/田中徳三)

千利休 本覚坊遺文(1989/日本/熊井啓)

夏をゆく人々(2014/イタリア+スイス+ドイツ/アリーチェ・ロルバケル)

あの日のように抱きしめて(2014/ドイツ/クリスティアン・ペッツォルト)

ぼくらの家路(2014/ドイツ/エドワード・ベルガー)

Dearダニー 君へのうた(2014/アメリカ/ダン・フォーゲルマン)

黒衣の刺客(2015/台湾+香港+中国+フランス/ホゥ・シャオシェン)

ベルファスト71(2014/イギリス/ヤン・ドマンジュ)

草原の実験(2014/ロシア/アレクサンドル・コット)

裁かれるは善人のみ(2014/ロシア/アンドレイ・ズビャギンツェフ)

ヴィヴィアン・マイヤーを探して(2013/アメリカ/ジョン・マルーフ+チャーリー・シスケル)

アクトレス 〜女たちの舞台〜(2014/フランス+スイス+ドイツ/オリヴィエ・アサイヤス)

マルガリータで乾杯を!(2014/インド/ショナリ・ボース)

岸辺の旅(2015/日本/黒沢清)

サヨナラの代わりに(2014/アメリカ/ジョージ・C・ウルフ)

恋人たち(2015/日本/橋口亮輔)

FOUJITA(2015/日本+フランス/小栗康平)

ハッピーエンドの選び方(2014/イスラエル/シャロン・マイモン+タル・グラニット)

デヴィッド・ボウイ・イズ(2014/イギリス/ハミッシュ・ハミルトン)

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(2014/ハンガリー+ドイツ+スウェーデン/コーネル・ムンドルッツォ)

さようなら(2015/日本/石黒浩)

海難1890(2015/日本+トルコ/田中光敏

SAINT LAURENT サンローラン(2014/フランス/ベルトラン・ボネロ)

独裁者と小さな孫(2014/ジョージア+フランス+イギリス+ドイツ/モフセン・マフマルバフ)

放浪の画家 ピロスマニ(1969/ジョージア/ギオルギ・シェンゲラヤ)

パリ3区の遺産相続人(2014/イギリス+フランス+アメリカ/イスラエル・ホロビッツ)

神様なんかくそくらえ(2015/アメリカ+フランス/ジョシュア&ベニー・ホロビッツ)

アンジェリカの微笑み(2010/ポルトガル+スペイン+フランス+ブラジル/マノエル・ド・オリヴェイラ)

マイ・ファニー・レディ(2015/アメリカ/ピーター・ボグダノヴィッチ)

ひつじ村の兄弟(2015/アイスランド+デンマーク/グリームル・ハルコーナルソン)

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