はじめましてのこと
- biseneizo
- 2014年11月19日
- 読了時間: 3分
BISEN FILMS 開設しました。 はじめまして、大阪美術専門学校(美専/ビセン)映像・アニメ専攻です。 このサイトでは、卒業制作作品をはじめ、学生たちの作品を紹介していきます。まだ大半が画像リストのみの掲載となっていますが、徐々に動画リンクも増やしていく予定です。お楽しみに。 併設した当ブログでは、サイトの更新情報、学校生活での一コマ、各種のお知らせなどを掲載していきます。
今日は、初ポストということで、その名も「はじめまして」という作品をご紹介します。2008年度の卒業制作で、長谷京さんのアニメーション作品です。独特のタッチと展開をお楽しみください。
いかがでしたか? 主人公の子(モク)は、よほど人見知りなんでしょうね。もう一人の子(イシネコ)が、よろしくねと手を差し出してくれてるのに、それに応えることができず、あわあわと焦って脂汗を流すばかり。ほんとは友だちがほしいのに、なかなか勇気が出ない。さんざんためらったあと、思い切って声をあげますが、裏返っちゃう(笑)。その声を音ではなく文字で表し、そのまま作品タイトルとしたラストも素敵です。 でも何より、この作品がユニークなのは、逡巡している間のモクの内面を表現した場面でしょう。実際はほんの数秒のことなのに、本人にしたら永遠にも感じられる葛藤の時間。作者はそこに焦点を当てます。
映像は音楽と同様、時間芸術です。一定の時間の中に存在しながら、そこで流れる時間は現実の時間とは違う流れ方をします。時に大胆な省略を伴って現実の時間よりずっと早く進ませることもあれば、逆に一瞬の出来事を引き伸ばし顕微鏡で覗くように細部の機微を丁寧に描写することもできます。
ここでは、後者ですね。友だちになりたい、でも怖い、そんな迷いが、そして、勇気をふり絞って新しい自分に生まれ変わろうとする決意が、時間を引き延ばして、きめこまやかに描かれています。モクの気持ち、共感できるという人も多いのではないでしょうか。
ドラマは、何も突飛な設定や意外な展開にあるのではありません。ごく当たり前の、ふだん何気なく過ごしている日常の些細なことがらの中に潜んでいます。そこに、心の揺れや動きがあって、それを映像として掬い取ることができれば、十分に観る人の心を動かすドラマになるのです。
なお、このシーンの背景、黒の中に荒々しい線が躍動しているところですが、シネマカリグラフィー(略してシネカリ)という技法で作られています。これは黒フィルムを針などでひっかいて描いていく手法。紙に描いた絵を後からカメラやスキャナで記録するのではなく、映写フィルムに直接描き込む原始的なアニメーションなんです。長谷さんは、美専に入学する前の体験授業でこの方法に出会い、その面白さに惹かれたといい、卒業制作に取り入れたいとずっと考えていたそうです。
ペーパーアニメーションと組み合わさって、まさにぴったりの表現になりましたね。
おんじ
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