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おんじの選ぶ「2014年の映画トップ3」

忙しい年の瀬、みなさまいかがお過ごしでしょうか。おんじです。

さて、年末ということで、私が選ぶ「今年の映画TOP3」を発表してみたいと思います。

今年、私の最も気に入った映画を3本選ぶとこうなります。

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 ・そこのみにて光り輝く(監督/呉美保)

 ・ある過去の行方(監督/アスガル・ファルハディ)

 ・ジャージー・ボーイズ(監督/クリント・イーストウッド)

 (次点)ワンダー・フル!、アクト・オブ・キリング

私が今年映画館で観た映画は、数えてみたら58本(リストは最後に掲載)。

偉そうに言える数ではありませんし、ラインナップもかなり偏っています。

その中の3本ですから、客観性は微塵もなく、あくまで個人的なセレクトです。

いやいや、私が選ぶならこうだ!という方は、ぜひぜひ教えてください。

このブログにはコメント機能がないので、メールFacebookページの方にお願いします。

では言い訳も済んだところで「私の3本」、

見逃したけど興味あるぞ、という方のために、作品の紹介をしてみましょう。

そこのみにて光輝く

2014年4月公開の日本映画。監督は大阪芸大映像学科出身の呉美保。出演は綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉ほか。

呉監督は、I先生の教え子ということもあり、美専で特別授業をしてくださったこともあるんです。お会いした印象でいうと、とても小柄で柔和そうな方で、その作品の繊細な演出にも監督の人柄がうかがわれます。ただ、今作はその繊細さと同時に相当な力強さも感じさせられました。

原作は佐藤泰志の同名小説。熊切和嘉監督(彼も芸大出身、呉さんの一つ上の学年、彼の今年の作品「私の男」もすごく良かったですが、個人的には昨年の「夏の終わり」の方が好き)の「海炭市叙景」(2010年)に続く、佐藤泰志原作の映画化第二弾。

私は、映画「海炭市叙景」を昨年DVDで観たのをきっかけに、佐藤泰志の小説を6冊ほど読んだのですが、この「そこのみにて光輝く」がいちばん好きでした。それを呉監督が映画にすると聞いて、期待して観にいきましたが、その期待は裏切られることなく、想像以上で非常に満足できました。

もちろん、小説と映画は違います。小説で好きだったシーンが削られることもあります(たとえば最初の約束をすっぽかすとことか)。でも、切なさや傷みや色気、映画でしか表現できない匂いのようなものがしっかり出ていて、新たな別個の価値を持つ作品になっていたと思います。

小説は二部構成になっていて、ドラマティックな第一部と思索的な第二部の対比が面白く、主人公の内面の葛藤がより複雑な第二部の方が私は好きなのですが、映画ではやはり物語として動きがあって完結している第一部をベースにしています。そこに、第二部の鍵概念である「山師」を具体的なエピソードにして、時間軸を逆にしてトラウマ的な記憶として折り込むという細工がなされています。「山という未知のものに対する説明しがたい渇望」という原作第二部の勘所は捨てることになりますが、これはきわめて文学的なテーマであるので、映画に関しては思い切って背景にしてしまったというのは、ある意味、英断だったと思います。

まあ要するに、小説の映画化として理想的な改変がなされていた、ということですね。

演出も映像も、本当に「匂い立つ」感じで、すごく良かったです。未見の方はぜひDVDででも観てほしい。

唯一「8,000円の謎」については、M先生ともども解決できていませんが。

ある過去の行方

制作会社/資本はフランスとイタリア。フランスでの公開は2013年5月。日本での公開は2014年4月。

作品の舞台はフランスですが、監督はイラン人のアスガル・ファルハディ。

すでに前作や前々作がベルリン映画祭など名のある映画祭で多く受賞している、有名な監督さんらしいのですが、私は恥ずかしながら、初めて観ました。そして、その演出の巧みさに射抜かれました。

物語は、フランス人の妻マリーと別居しテヘランに帰っていたアーマドが、離婚手続きのためパリに戻ってくるところから始まります。冒頭の空港のシーン、ガラス越しに互いの姿は見えるのに声が聞こえない二人の再会のあり方にはじまり、雨中を走る車内シーンの人の動かし方、と導入部分だけで、もう唸らされます。

その後の物語も展開もたいへん面白い。家庭内の複雑な人間関係において、些細な行き違いが解きほぐせない糸のように絡まってしまっている、そんな中に戻ってきたアーマド。あくまで優しい傍観者としてしか振る舞えないのですが、その彼の存在が触媒となって、家族たちの過去の秘密が明かされていきます。一つのことが明らかになると、また次の謎が生まれて、、というスリリングな展開で退屈させません。

この過去の事実の発見の連続のような展開を、回想シーンを一切用いることなく、人物の告白という形で描いていくのです。その告白に至るまでの過程も丁寧に描かれ、けっして説明臭さはありません。

単なる謎解きパズルに堕さない緻密かつ情感的なシナリオ、カメラワークから役者の動線まで計算されつくされた演出。もうこれは映画的すぎる傑作です。

ジャージー・ボーイズ

2014年、アメリカ映画。監督はクリント・イーストウッド。

1960年代に活躍したアメリカンポップスの4人組フォー・シーズンズの光と影を、彼らのヒット曲とともに描くブロードウェイの人気ミュージカルの映画化。イーストウッドの企画ではなく、雇われ監督という流れでの仕事だったらしいのですが、そこは巨匠、しっかりイーストウッドの映画になっていました。

ただ、この作品、純粋なミュージカルではないと思います。台詞やモノローグが歌になるわけではありません。歌はすべて人物が歌う場面でのみ歌われます。音楽映画ではありますが、ドラマ形式です。

ですが、この作品の魅力はやっぱり歌。それを際立たせる演出。「Sherry」や「December 1963(Oh, What a Night)」もいいけど、やっぱり何と言っても「Can't Take My Eyes off You」。あかん、すばらしすぎる。その前のストーリーなんかどうでもよくて、とにかくこの歌まるまる全曲ステージで見せるクライマックスのシーン以降は、わけもなく泣けてしまいます。

さらにエピローグのシーンの洒落た演出(観て欲しいので具体的には書きません)はもう、さぶイボもの(あ、さぶイボって鳥肌のことです)。さらにラストの大団円。満腹感ハンパないっす。でも、すぐ「もう一回観たい!」てなりました。

ちょっと冷静な書き方ができませんでしたが、歌が好きなら観て損はないと思います。

次点として、捨てがたい作品を2つ挙げました。

ワンダー・フル!

独特の抽象表現が楽しい実験アニメ作家、水江未来の新作「WONDER」に旧作を加えた全14作からなる短編集。

細胞の集合体のようなグラフィックのモチーフが繰り返し登場するが、それらがユーモラスに躍動しながら一つの世界を作っていく。久しぶりに、純粋な動きだけで興奮できました。

アクト・オブ・キリング

2012年制作、2014年日本公開。制作会社/資本はイギリス、デンマーク、ノルウェー。監督はアメリカ人のジョシア・オッペンハイマー。インドネシアで撮影されたドキュメンタリー。

インドネシアでは、1965年のクーデター(※)後、プレマンと呼ばれる右派の民兵組織、要はチンピラ集団なんですが、彼らによる「赤狩り」で100万人以上の無辜の民が殺害されたといわれるそうです。この映画は、当時、虐殺に関わった者たちを取材し、彼らにその時の行動をカメラの前で演じさせて再現するという手法をとった異色作。

嬉々として自分がどうやって人を殺したか演じてみせる男たち。一人何役も兼ね、加害者と被害者を演じ分けたり、罪の意識がないようで、自分たちの武勇伝を語る映画とばかりのはしゃぎっぷり。もう、ほとんどお祭り騒ぎ。これこそ悪夢。

観ながら、あまりの残酷さに、これがフェイクドキュメンタリーであってくれたらいいのにと、どれだけ願ったことか。でも、真実なんですよね。

※因みに、テレビでよく見るデヴィ夫人は、このクーデターで失脚させられたスカルノ元大統領の第三夫人。19歳のときに日本から嫁いだそうです。彼女はこの映画を「真実を描き夫の名誉を回復してくれた」と高く評価しているそうです。

最後に、今年私が映画館で観た作品のリストを掲げておきます。

作品タイトル(制作年/制作国/監督名)

★は私のおすすめ

(私は、簡単な鑑賞メモを手帳につけていて、その際、個人的な好みを5点満点で採点してます。★は5点を付けた作品です)

●は大阪芸大出身の監督、◯は美専出身の監督です。

ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE(2013/日本/亀垣一)

利休にたずねよ(2013/日本/田中光敏●)

おじいちゃんの里帰り(2011/ドイツ/ヤセミン・サムデナリ)★

フォンターナ広場(2012/イタリア+フランス/マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ)

ソウル・ガールズ(2012/オーストラリア/ウェイン・ブレア)★

HUNTER×HUNTER-The LAST MISSION-(2013/日本/佐藤雄三)

パリ、ただよう花(2011/中国+フランス/ロウ・イエ)

さよなら、アドルフ(2012/オーストラリア+ドイツ+イギリス/ケイト・ショートランド)

アイム・ソー・エキサイテッド!(2013/スペイン/ペドロ・アルモドバル)

鉄くず拾いの物語(2013/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ+フランス+スロベニア/ダニス・タノヴィッチ)

ダラス・バイヤーズ・クラブ(2013/アメリカ/ジャン・マルク・ヴァレ)

ホビット 竜に奪われた王国(2013/アメリカ+ニュージーランド/ピーター・ジャクソン)

家路(2014/日本/久保田直)

愛の渦(2014/日本/三浦大輔)

グランドピアノ 狙われた黒鍵(2013/スペイン+アメリカ/エウヘニオ・ミラ)

コーヒーをめぐる冒険(2012/ドイツ/ヤン・オーレ・ゲルスター)

白ゆき姫殺人事件(2014/日本/中村義洋)

ワンダー・フル!(2014/日本/水江未来)★

フルートベール駅で(2013/アメリカ/ライアン・クーグラー)★

相棒 劇場版3 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ(2014/日本/和泉聖治)

そこのみにて光り輝く(2014/日本/呉美保●)★

ワレサ 連帯の男(2013/ポーランド/アンジェイ・ワイダ)

激写!カジレナ熱愛中!(2014/日本/安川有果◯)

アクト・オブ・キリング(2012/デンマーク+ノルウェー+イギリス/ジョシア・オッペンハイマー)★

ある過去の行方(2013/フランス+イタリア/アスガー・ファルハディ)★

チョコレートドーナツ(2012/アメリカ/トラヴィス・ファイン)

アナと雪の女王(2013/アメリカ/クリス・バック+ジェニファー・リー)

グランド・ブタペスト・ホテル(2014/ドイツ+イギリス/ウェス・アンダーソン)

カニバル(2013/スペイン+ルーマニア+ロシア+フランス/マヌエル・マルティン・クエンカ)

罪の手ざわり(2013/中国/ジャ・ジャンクー)

捨てがたき人々(2012/日本/榊英雄)

マレフィセント(2014/アメリカ/ロバート・ストロンバーグ)

リアリティのダンス(2013/チリ+フランス/アレハンドロ・ポドルフスキー)

2つ目の窓(2014/日本/河瀬直美)

私の男(2014/日本/熊切和嘉●)

サンシャイン! 歌声が響く街(2013/イギリス/デクスター・フレッチャー)

郊遊 ピクニック(2013/台湾+フランス/ツァイ・ミンリャン)

リスボンに誘われて(2012/ポルトガル+スイス+ドイツ/ビレ・アウグスト)

るろうに剣心 京都大火編(2014/日本/大友啓史)

るろうに剣心 伝説の最期編(2014/日本/大友啓史)

NO(2012/チリ+メキシコ+アメリカ/パブロ・ラライン)

TOKYO TRIBE(2014/日本/園子温)

破戒(1962/日本/市川崑)★ ※「雷蔵祭」にて

ジャージー・ボーイズ(2014/アメリカ/クリント・イーストウッド)★

レッド・ファミリー(2013/韓国/イ・ジュホン)

ニンフォマニアックvol.1(2013/デンマーク+ドイツ+フランス+ベルギー+イギリス/ラース・フォン・トリアー)

トム・アット・ザ・ファーム(2013/カナダ+フランス/グザヴィエ・ドラン)

ニンフォマニアックvol.2(2013/デンマーク+ドイツ+フランス+ベルギー+イギリス/ラース・フォン・トリアー)

オオカミは嘘をつく(2013/イスラエル/アハロン・ケシャレス+ナヴォット・ハプシャド)

天才スピヴェット(2014/フランス/ジャン・ピエール・ジュネ)

嗤う分身(2013/イギリス/リチャード・アイオアディ)

0.5ミリ(2014/日本/安藤桃子)

西遊記 はじまりのはじまり(2013/中国/チャウ・シンチー)

メビウス(2013/韓国/キム・ギドク)

おやすみなさいを言いたくて(2013/ノルウェー+アイスランド+スウェーデン/エーリク・ポッペ)★

ゴーン・ガール(2014/アメリカ/デヴィッド・フィンチャー)

毛皮のヴィーナス(2013/フランス/ロマン・ポランスキー)

ストックホルムでワルツを(2013/スウェーデン/ペール・フライ)

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